奇才・平賀源内とは何者だったのか？―江戸に咲いた異端の才覚

くまっと

江戸の世に一陣の風が吹いた。まるで時代がその男を拒みながらも、決して無視できなかったかのように。

その名は、平賀源内（ひらがげんない）。
発明家、蘭学者、作家、画家、薬学者、エンジニア…その肩書を数えれば指が足りぬほどである。だが彼を一言で語るなら、それは「江戸のレオナルド・ダ・ヴィンチ」だろう。

享保13年（1728年）、讃岐国（現在の香川県）にて生を受けた源内は、のちに江戸へと上り、蘭学や鉱山開発、そして当時の最先端科学に触れることとなる。

その知識と行動力は、まさに規格外。
なかでも最も有名なのは、「エレキテル」であろう。現代で言えば静電気発生装置のようなもので、源内はこれを独自に修復・実演し、江戸の人々に“雷を瓶に閉じ込める術”を見せたのだ。

まさに科学と魔法の境界線を行き来する存在。それが平賀源内だった。

また、平賀源内はコピーライティングの元祖とも言われる。

「土用の丑の日にウナギを食べよ」

この言葉は、実は源内が知人の鰻屋の商売繁盛のために考案した宣伝文句だった。いまや日本中で当たり前となったこの習慣のはじまりに、彼の発想があるのは驚きである。

源内の筆は、紙の上ではなく、庶民の心に火を点ける言葉を生み出したのだ。

しかし、その飛び抜けた知性と自由な精神は、江戸という体制の中では異端であった。

晩年、源内は殺人事件を起こし、牢内で病死する。享年49。
その死は突然で、あまりにあっけなく、そしてあまりに孤独だった。

だが、その人生は誰よりも鮮烈に江戸の空を彩った。
彼が命を燃やし、描いた未来の欠片は、今も私たちの暮らしの中に息づいている。

令和のいま、再び多才で枠に囚われない生き方が注目されつつある。副業、クリエイター、エンジニア、医療と芸術の融合…。

まさに、現代における「源内的生き方」が求められているのだ。

技術と感性を併せ持ち、常識を疑い、未来を見据えて行動する者こそ、混沌の時代に灯をともす。
平賀源内の生涯は、我々にそのヒントを静かに語りかけている。