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レモンの木を庭に植えてはいけない——その理由を知れば、あなたもまた庭の静けさに耳をすます

くまっと

春の陽光がやわらかく差し込む庭に、黄色く実るレモンの姿は、まさに絵画のごとき風情である。香り高き果実と、艶やかな緑葉のコントラストは、古今東西の詩人が愛した自然美の象徴といえよう。しかし——である。
その一見、穏やかで絢爛たる「レモンの木」には、思いもよらぬ“落とし穴”が潜んでいるのだ。

庭にレモンの木を植えたが最後、あなたの暮らしは少しずつ蝕まれていく

レモンの木を庭に植えてはいけない。
そう口にすると、多くの者は一様に首をかしげる。
「なぜ?」「美しいじゃないか」「果実も採れるし健康にも良い」
確かにその通りである。だが、実用と美観の裏に潜む“自然の構造”を理解せずに、ただ植えるという行為に及ぶことは、まるで雨宿りもせずに嵐の中に立ち尽くすに等しい。

ここでは、レモンの木が庭に及ぼす“影”について、ひとつずつ明らかにしてゆこう。


1. レモンの木は「害虫を呼ぶ」

ことに柑橘類には、アブラムシ・カイガラムシ・ミカンハダニといった害虫が寄りつく。レモンの木も例外ではない。これらの虫たちは、ただ集うのみならず、周囲の植物にまでその毒手を伸ばす。

例えば、アブラムシはウイルス病を媒介し、近隣の草花に感染を広げる。庭の中心に一本のレモンを植えたが最後、やがては庭全体が虫の宴となり、見目麗しきはずの花壇すらも、翳りを帯びた景色と化すのである。


2. 鳥もまた、果実の香りに惹かれてやってくる

虫のみならず、鳥もまたこの黄色い果実に引き寄せられる。ヒヨドリやムクドリなどの中型鳥は、果実を啄むばかりか、糞害を残して去っていく。

鳥の糞には雑菌が含まれ、乾燥後は風に舞い、人の呼吸器に悪影響を及ぼすとも言われている。また、洗濯物や外壁、さらには車体にまで被害を及ぼすことも多く、想像以上に日常生活への影響は甚大だ。


3. 根が深く張りすぎて“地中を侵食”する

レモンの木は、成長とともにその根を四方八方に張り巡らす。表面だけでなく、地中深くにも根が及び、水道管や排水溝といった住宅設備に影響を与える恐れがある。

あるいは、石畳の目地から根が押し出し、ひび割れが生じるといった事例も少なくない。そのたびに補修や工事が必要となり、静かなはずの庭は、つねに“何かの修復”に追われる空間と化してしまうのだ。


4. 落葉と落果による「掃除の手間」

レモンの木は常緑樹ではあるが、古い葉は定期的に落ちる。そして季節になれば、未収穫の果実もまた地面へと落下する。

その落葉・落果は虫を呼び、腐敗し、悪臭を放つ原因ともなる。庭という名の小宇宙は、いつしか“掃除の牢獄”と化し、休日のたびに箒を手にした沈黙の時間が増えてゆく。


5. 寒さに弱く“枯れる可能性”が高い

日本の多くの地域では、冬場に氷点下を記録する日もある。レモンの木はその寒さに非常に弱く、特に幼木は一夜の霜で命を落とすこともある。

一度枯れれば、それを撤去する手間、再び植え替える費用、そして何より“枯れてしまったことへの後悔”が残る。
こうして人は、一本のレモンの木から、時に深い徒労感を味わう羽目となるのだ。


6. 隣家との“トラブル”の火種にもなる

果実をめぐるトラブルは、思わぬ形で人間関係に亀裂を生む。レモンの実が隣家の敷地に落ちた、虫が飛び移った、剪定の音がうるさい——

植物の問題は、感情的な対立へと発展しやすい。小さな火種が、やがては“越境”という名の炎を招き、近隣関係に亀裂を生むことさえある。レモンの木は、庭の片隅に植えられた瞬間から、静かなる争いの序章ともなり得るのだ。


7. 剪定・肥料・管理の“手間と費用”

レモンの木は手をかければこそ美しく、果実も多くつける。だが、手をかけねば、虫に食われ、枝は伸び放題となり、景観も乱れる。

剪定は年に2回、肥料は年3回以上。さらに病害虫対策に薬剤散布も必要。これらを怠ると、木はすぐさまその機能を失い、実も小ぶりで味気ないものとなる。
つまり、ただ植えて「はい終わり」ではないのだ。
レモンの木とは、労力と時間、そして意志の継続がなければならぬ“主”であり、私たちはその“召使い”となる覚悟が必要だ。


8. それでもあなたは、レモンの木を植えますか?

レモンの木のもたらす恩恵は確かに甘美である。だが、その陰には、管理・虫害・寒害・近隣関係など、さまざまな“代償”が存在する。

庭とは、日々の生活の静寂を守るべき空間である。そこにレモンの木という“動的な支配者”を迎え入れるのは、よほどの覚悟がなければならない。
もしあなたが、日々の管理を愛と呼べるなら、植えても良いだろう。だが、ただ美しいからといって、軽率に選ぶことは、まるで静かな池に石を投げ入れるようなもの。波紋はやがて、あなたの生活の隅々にまで広がっていくのだから。

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